3Dプリンターのサポート材とは?種類の違いと選び方を全解説
この記事のポイント
3Dプリンターサポート材は除去方法により水溶性・可溶性・非可溶性に分かれ、FDM方式ではPVAやHIPS、光造形方式ではモデル材と同一樹脂が使われる。造形方向の調整やモデル分割によりサポート材の使用量を抑えられる。
「3Dプリンターのサポート材について調べているけれど、種類が多くてどれを選べばいいのか分からない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 3Dプリンターのサポート材の役割と必要な理由
- 水溶性・可溶性・非可溶性の種類ごとの特徴
- 用途に合わせたサポート材の選び方とコストを抑える工夫
3Dプリンターサポート材は、種類ごとの特徴を理解すれば、造形物や用途に合わせて無理なく選べるようになります。
専門用語につまずきやすいサポート材の基礎知識を整理しますので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
3Dプリンターのサポート材とは
3Dプリンターのサポート材とは、造形中のモデルを下から支えるための仮設構造のことです。積層方式や光造形方式にかかわらず、宙に浮いた形状をそのまま積み上げることはできないため、多くの造形でサポート材が必要になります。安定した出力を維持するための3dプリンターのメンテナンスと同様に、サポート材の適切な設計は造形を成功させる重要な要素です。
ここではサポート材の役割と目的、必要になる代表的な形状、サポート材を使わないと起こる造形不良の3つの観点から、基礎知識を整理します。
サポート材の役割と目的
サポート材の最大の役割は、造形中のモデルを重力から守ることです。3Dプリンターは下の層から順に積み重ねていく仕組みのため、支えのない部分があると、樹脂やフィラメントがそのまま垂れ下がってしまいます。
FDM方式ではモデルの反りを抑える効果もあります。これはスライサーでの3dプリンターのサポート材設定において、ステージへの接地面積を増やす設計を行うことで、造形物が冷える過程での収縮によるゆがみを軽減できます。
光造形方式ではさらに独自の力学が加わります。硬化した層をレジンタンクの底面やフィルムから引き剥がす際に生じる剥離抵抗に耐える必要があり、重力だけでなく引き上げる力への対策としてもサポート材が使われます。
サポート材が必要になる代表的な形状
サポート材が必要になる形状は、大きく3つに分けられます。
- オーバーハング:一方向にせり出した構造で、下に支点がない部分
- ブリッジ:2つの支柱の間に架け渡すような構造
- ホール:内部に空洞を持つ構造や、貫通した穴の部分
FDM方式では、オーバーハングの角度がおおむね45度を超えるとサポート材が必要とされています。角度が浅いうちは自重を保てても、45度を超えると層のズレや垂れ下がりが起きやすくなるためです。なお、サポートが必要な箇所が増えるほど、造形後の3dプリンターのサポート材除去の工数も増加します。
ブリッジについては、支柱同士の距離が短ければサポート材なしで橋渡しできる場合もありますが、距離が長くなるほど中央部がたわみやすくなります。
サポート材を使わないと起こる造形不良
サポート材を省略すると、オーバーハング部分が自重で垂れ下がり、狙った形状から大きくずれてしまいます。FDM方式では3dプリンターのノズルから吐出された樹脂が支えを失って垂れ下がるため、角度が急なほど影響は大きく、積層の乱れがそのまま表面の凹凸として残ります。
光造形方式では、レジンタンクからの剥離時に造形物が変形したり、途中で剥がれ落ちたりする失敗も起こります。これはサポート材による固定が不十分な場合に発生しやすいトラブルです。
複雑な構造や高さのあるモデルでは、サポート不足によって造形中に倒れるリスクも高まります。こうした不良を防ぐには、形状に応じたサポート材の設計が欠かせません。
3Dプリンターサポート材の種類
3Dプリンターのサポート材は、除去のしかたによって水溶性・可溶性・非可溶性の3タイプに大きく分けられます。FDM方式のデュアルノズル機では異なる材料を切り替えて出力するため、材料間の相性や設定によっては3dプリンターのノズル詰まりを引き起こす場合もあります。さらに造形方式によっても、使えるサポート材の種類が変わります。
ここでは水溶性サポート材の特徴、可溶性サポート材の特徴、非可溶性サポート材の特徴、造形方式別のサポート材の違いを順に見ていきます。
水溶性サポート材の特徴
水溶性サポート材は、水に浸けるだけで溶け出すタイプのサポート材です。代表的な素材にPVA(ポリビニルアルコール)があり、FDM方式のデュアルヘッド機やインクジェット方式の造形機で使われています。
水に溶かして除去できるため造形物を傷つけにくく、細い構造や取り外しにくい中空部分にも使いやすいのが利点です。一方で、デュアルノズルの機体が必要になる、湿気に弱く保管に気を使うといった注意点もあります。
可溶性サポート材の特徴
可溶性サポート材は、専用の溶剤に浸すことで溶解させるタイプです。代表的な素材にHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)があり、リモネンという溶剤で溶かして除去します。
ABS樹脂と組み合わせて使える点が特徴で、造形物を傷つけずに高品質な表面を保てます。ただし溶剤の取り扱いには注意が必要で、造形物の内部に溶剤が入り込むと除去が難しくなる場合もあります。
非可溶性サポート材の特徴
非可溶性サポート材は、水にも溶剤にも溶けず、手作業やニッパー、ヘラなどの工具で物理的に取り除くタイプです。光造形方式では造形物と同じ樹脂がサポート材として使われることが多く、これも非可溶性に分類されます。
強度や安定性を確保しやすい一方で、除去の手間がかかり、跡が残りやすいという課題もあります。細かな形状や複雑な内部構造には不向きな場合があります。
造形方式別のサポート材の違い
造形方式によって、選べるサポート材の種類は変わります。
| 造形方式 | 主なサポート材のタイプ | 特徴 |
|---|---|---|
| FDM方式 | 非可溶性(モデル材と同一)、水溶性(PVA)、可溶性(HIPS) | デュアルヘッド機なら専用サポート材が使える |
| 光造形方式 | 非可溶性(モデル材と同一樹脂) | 手作業での除去が基本、専用サポート材は不要 |
| インクジェット方式 | 水溶性 | 水に浸すだけで除去でき後処理が簡単 |
このように、造形方式ごとにサポート材の選択肢が異なるため、使用しているプリンターの方式を踏まえて種類を選ぶことが大切です。
3Dプリンターサポート材の選び方
3Dプリンターサポート材の選び方に迷ったときは、モデル材との相性、除去のしやすさ、造形品質、業務用途での使いやすさという4つの軸で考えると判断しやすくなります。
ここではモデル材との組み合わせで選ぶ方法、除去のしやすさで選ぶ方法、造形品質と表面仕上げで選ぶ方法、業務用途での選定基準を順に紹介します。
モデル材との組み合わせで選ぶ
サポート材はモデル材との相性によって選択肢が変わります。PLAを使うFDM方式であれば水溶性のPVAが定番で、ABSを使う場合はリモネンで溶かせるHIPSが選ばれることが多くなっています。
光造形方式ではモデル材と同じ樹脂がそのままサポート材になるため、モデル材選びの段階でサポート材も決まる点が特徴です。使用する装置や樹脂の組み合わせを先に確認しておくと、後から選び直す手間を減らせます。
除去のしやすさで選ぶ
除去のしやすさは、サポート材選びで重視したいポイントのひとつです。水溶性サポート材は水に浸けるだけで溶けるため、細い構造や複雑な内部にも対応しやすくなっています。
一方で非可溶性サポート材は、ニッパーやヘラなどの工具で手作業で外す必要があり、形状が複雑になるほど作業に時間がかかります。除去のしやすさは、サポート密度やサポート柱の太さといった造形前の設定によっても左右されます。
造形品質と表面仕上げで選ぶ
造形品質を重視するなら、除去後の表面への影響も考慮したサポート材選びが大切です。サポート材を外した跡には小さな凹凸が残りやすく、跡の目立ちにくさは素材や除去方法によって変わります。
水溶性サポート材は跡が残りにくく、精密な部品や見た目を重視する造形物に向いています。非可溶性サポート材を使う場合は、除去後にサンドペーパーなどで表面を仕上げる工程を見込んでおくと、仕上がりの品質を保ちやすくなります。
業務用途での選定基準
業務で3Dプリンターを使う場合は、品質・コスト・後処理効率のバランスで選定基準を考えます。水溶性サポート材は後処理の工数を抑えられる反面、対応できる装置や材料が限られる点に注意が必要です。
| 選定基準 | 重視するポイント |
|---|---|
| 品質 | 除去跡の目立ちにくさ、複雑形状への対応力 |
| コスト | 材料費、後処理にかかる人件費や時間 |
| 後処理効率 | 除去のしやすさ、リードタイムへの影響 |
小さく薄い造形物では、本体の材料費よりもサポート材の使用量がコストを左右する場合もあります。自社の造形物の特性や生産体制に合わせて、これらの基準を総合的に見極めることが重要です。
3Dプリンターサポート材のコストと使用量を抑える工夫
3Dプリンターサポート材は、材料費と造形時間の両面でコストに直結します。使用量を抑える工夫を知っておくと、無駄なコストを減らしながら安定した造形を続けられます。
ここではサポート材にかかる材料費と造形時間、造形方向や配置を工夫してサポートを減らす方法、モデル分割によるサポート削減について紹介します。
サポート材にかかる材料費と造形時間
サポート材は本体とは別に追加で必要になる材料のため、その分だけ材料費がかさみます。小さく薄い造形物では、本体よりもサポート材の使用量がコストを左右することもあります。
サポート材が多いほど造形時間も長くなります。造形時間の長さはプリンターの稼働コストにも影響するため、材料費と時間の両方を意識してサポート量を管理することが大切です。
造形方向や配置を工夫してサポートを減らす
サポート材を減らすうえで効果が大きいのが、造形方向の調整です。断面積の小さい部分から徐々に大きくなるように向きを決めると、オーバーハングが生じにくくなります。
角に面取りを施し、その面を接地面にする方法も有効です。オーバーハングの角度を45度以内に抑えられれば、サポート材なしで造形できる部分が増えます。
樹木のように枝分かれした形状でモデルを支えるツリー状のサポート構造を使う方法もあります。接触面積を抑えながら安定してモデルを支えられるため、材料の使用量と造形時間の両方を削減しやすくなります。
モデル分割によるサポート削減
複雑な形状は、造形後に接合することを前提にモデルを分割すると、サポート材を大きく減らせる場合があります。球体のように全周にオーバーハングを持つ形状を1体で造形すると、表面の広い範囲にサポート材が必要になり、仕上がりにも影響します。
このような形状はあらかじめ2つ以上に分割し、それぞれをサポート材の少ない向きで造形してから組み合わせると、材料費と造形時間を抑えつつ表面の仕上がりも保ちやすくなります。分割する位置は、接合後に目立ちにくい面を選ぶのがポイントです。
まとめ:3Dプリンターサポート材は種類を理解し用途に合わせて選ぶことが重要
本記事では、3Dプリンターサポート材の役割や必要になる形状、水溶性・可溶性・非可溶性といった種類の違い、用途に応じた選び方、コストや使用量を抑える工夫まで紹介しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- サポート材はオーバーハングやブリッジなどを支え造形不良を防ぐ
- 水溶性・可溶性・非可溶性で除去のしやすさや用途が異なる
- モデル材や業務用途に合わせた選定で品質とコストを両立できる
サポート材の種類と選び方を理解しておけば、造形物や運用体制に合った選択ができるようになり、材料費や後処理の手間を無理なく抑えられます。
3Dプリンターサポート材の選定や運用でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
3dプリンター サポート材に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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