3Dプリンターの反りが起こる原因と対策を業務用に詳しく解説
この記事のポイント
3Dプリンターの反りは樹脂の収縮と冷却速度の差が主な原因。ベッド温度の調整、チャンバーによる温度安定化、素材に応じた冷却ファン設定、ブリムやラフトの活用が反りを抑える有効な対策になる。
「3Dプリンターで造形物の底面や角が反ってしまい、狙い通りの形状に仕上がらない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 3Dプリンターで反りが起こる仕組みと原因
- 温度管理と材料別の具体的な反り対策
- プラットフォームや形状の工夫による防止策
3Dプリンターの反りは、樹脂が冷えて収縮する仕組みを理解し、温度と設定を整えることで大きく減らせます。
本記事を読み進めることで、反りの原因の理解から材料に応じた対策、プラットフォームや形状の工夫まで理解でき、安定した造形品質を実現できるようになります。
3Dプリンターで反りが起こる原因
3Dプリンターの反りは、樹脂が冷えて固まる過程で生じる収縮によって起こります。定期的に3dプリンターのメンテナンスを行っている場合でも、環境や素材によって発生しやすさが変わるため、原因を正しく理解しておくと、対策の優先順位を判断しやすくなります。
ここでは樹脂の収縮、冷却速度の差、造形物の形状という3つの観点から原因を確認します。
樹脂の収縮によるもの
樹脂は熱膨張と、液体から固体への状態変化という2種類の収縮を起こします。このうち影響が大きいのは状態変化による収縮です。
ABS樹脂の収縮率はおよそ0.7パーセント前後、ポリカーボネートでは1パーセントを超える場合もあり、わずかな温度変化が大きな変形や3dプリンターでの失敗につながります。一方でPLAは収縮率が低く、反りにくい素材として知られています。
冷却速度の差によるもの
造形物は、冷却の速さにムラがあると反りやすくなります。ベッドに接する底面と、外気にさらされる上部や角では冷える速度が異なり、その差が引っ張り合う力を生み出します。
外気の影響を受けやすい環境では、この温度差がさらに大きくなり、最終的な寸法や造形体の3dプリンターの精度を低下させる反りが強く出てしまう傾向があります。
造形物の形状によるもの
反りは形状によっても発生しやすさが変わります。収縮する部分と、それを抑え込む部分、拘束されずに動きやすい部分がひとつの造形物の中に混在していることが、反りが起きる仕組みの根本にあります。
底面積が大きく背の低い形状や、角が鋭いデザインは特に反りが目立ちやすく、後から3dプリンターの表面処理を施しても完全にカバーするのは難しいため、設計段階での配慮が求められます。
温度管理で3Dプリンターの反りを抑える方法
反りの主な原因が冷却による収縮である以上、温度管理は最も効果的な対策のひとつです。後工程で3dプリンターの塗装などをきれいに仕上げるためにも、まずはベッド、造形環境、冷却ファンの3つを見直していきます。
ここではベッド温度の見直し、チャンバーやエンクロージャーの活用、冷却ファンの調整について紹介します。
ベッド温度の見直し
ベッド温度が低いと、造形物の底面が早く冷えて収縮し、反りが発生しやすくなります。ABSでは100度前後、素材ごとの推奨温度を確認して設定することが基本です。
温度を上げすぎると別の造形不良につながることもあるため、素材メーカーが示す推奨範囲の中で調整することが大切です。
チャンバーやエンクロージャーの活用
エンクロージャーで造形空間を囲うと、外気との温度差を抑えられます。チャンバー内の温度を40度から60度程度に保つことで、造形中の温度変化が小さくなり、反りを大きく軽減できます。
造形環境の温度は、素材のガラス転移点よりおよそ20度から30度低い程度に保つのが目安です。急激な温度変化を避けることが、反りを防ぐうえで重要になります。
冷却ファンの調整
冷却ファンは、造形物の表面を素早く固める役割を持ちますが、急激な冷却は反りの原因にもなります。ABSのように反りやすい素材を扱う場合は、外部からの冷却ファンを無効にすることが有効です。
反りにくいPLAであっても、最初の数層だけファンを弱めることで、底面の急冷を防ぎやすくなります。素材の特性に応じてファンの設定を使い分けてください。
材料別に見る反り対策の違い
反りへの対応は、使用するフィラメントの特性によって変わります。素材ごとの性質を把握しておくと、適切な対策を選びやすくなります。
ここではPLAの反り対策、ABSの反り対策、反りにくいフィラメントの選び方を紹介します。
PLAの反り対策
PLAは収縮率が低く、3Dプリンター用フィラメントの中でも反りにくい素材です。低温で造形できるため、特別なチャンバーがなくても比較的安定した結果が得られます。
反りにくい素材とはいえ、大型の造形物や薄く広い形状では反りが出ることもあるため、ベッド温度の調整とプラットフォームの密着を基本の対策として押さえておくと安心です。
ABSの反り対策
ABSは収縮率が高く、温度管理を怠ると反りが起きやすい素材です。ヒートベッドの温度はおよそ100度前後を目安に設定し、外部からの冷却ファンは無効にすることが有効です。
チャンバーやエンクロージャーを使い、造形空間全体を安定した温度に保つことも、ABSの反り対策では欠かせません。
反りにくいフィラメントの選び方
強度を重視しつつ反りを抑えたい場合は、ABSの耐候性を高めたASA樹脂も選択肢になります。紫外線による劣化に強く、屋外用途にも向いています。
PLAとABSの中間的な性質を持つPETGも、割れにくく扱いやすい素材として人気があります。
| 素材 | 反りやすさ | 特徴 |
|---|---|---|
| PLA | 低い | 低温で造形でき初心者向け |
| PETG | 中程度 | 硬さと粘りのバランスが良い |
| ABS | 高い | 温度管理が必須、強度に優れる |
| ASA | 高い | ABSに近いが耐候性が高い |
用途と求める強度に応じて素材を選ぶことが、反りを抑えながら狙った品質を実現する近道です。
プラットフォームと形状で反りを防ぐ方法
温度管理と材料選びに加えて、プラットフォーム側の工夫や形状の見直しも反り対策として有効です。複数の対策を組み合わせることで、より安定した造形が可能になります。
ここではラフト・ブリムの活用、接着剤やプラットフォームの見直し、反りにくい形状・配置の工夫を紹介します。
ラフト・ブリムの活用
ブリムは、造形物の周囲に薄い層を数周分広げる機能です。ABSであれば外周に8mmから12mm程度を目安に設定すると、接地面積が増えて反りを抑えやすくなります。
ラフトは、モデルの下に土台となる別の層を敷く方法です。反りを抑える効果はブリムより強力ですが、剥がす手間が増える点は考慮が必要です。角だけに円盤状のタブを配置するマウスイヤーという手法もあり、コーナー部分の反りが目立つ場合に有効です。
接着剤やプラットフォームの見直し
ベッド表面とフィラメントの密着を高めることも、反り対策として欠かせません。スティックのりや専用接着剤をベッドに塗布すると、造形物がベッドから浮き上がる力に対抗しやすくなります。
ベッド表面が汚れていると密着力が下がるため、ほこりや油分、前回の造形時の残留物がないか確認し、必要に応じて清掃してから造形を始めることが基本です。
反りにくい形状・配置の工夫
造形物の底面積が大きく背が低い形状や、角が鋭いデザインは反りが目立ちやすい傾向があります。可能であれば角に丸みを持たせる、底面積を分散させるといった設計上の工夫も効果的です。
複数のパーツを同時に造形する場合は、ベッド中央付近に配置すると温度が安定しやすく、反りのリスクを抑えられます。
まとめ:3Dプリンターの反りは原因の理解と温度管理が鍵
本記事では、3Dプリンターで反りが起こる原因、温度管理による対策、材料別の違い、プラットフォームや形状の工夫を紹介しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 反りは樹脂の収縮と冷却速度の差によって発生する
- ベッド温度・チャンバー・冷却ファンの調整が基本の対策になる
- 材料特性を踏まえ、ラフトや形状の工夫を組み合わせると効果が高まる
原因を理解しながら温度管理と対策を積み重ねることで、3Dプリンターの反りを抑え、狙い通りの造形品質を安定して実現できます。反り対策や業務での再現性向上について相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
3Dプリンターの反りに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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