3Dプリンターの表面処理とは?方法5選と内製・外注の判断基準
この記事のポイント
3Dプリンターの表面処理は積層痕の除去と仕上げの工程で、研磨・塗装・化学処理・ブラスト処理を素材や造形方式に応じて使い分ける。金属部品は後加工で強度と精度を確保し、依頼頻度や設備投資の余力に応じて内製と業者への外注を選び分けることが重要になる。
「3dプリンターで出力した部品に積層痕が目立ち、そのままでは製品として使えない。研磨や塗装など表面処理の方法はいろいろあるようだが、自社の素材や用途にどれが合うのか、内製すべきか業者に任せるべきかも判断がつかない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 3dプリンターの表面処理が必要な理由と積層痕の原因
- 研磨・塗装・化学処理など主な表面処理方法5つ
- 素材・造形方式別の選び方と内製・外注の判断基準
3dプリンターの表面処理は、造形物を試作品や製品として通用する仕上がりに引き上げるための重要な工程です。
本記事を読めば、自社の素材や造形方式に合った表面処理方法がわかり、内製と外注のどちらを選ぶべきかも判断できるようになります。ぜひ最後まで読み進めてください。
3Dプリンターの表面処理とは?必要性と積層痕の原因
3Dプリンターの表面処理とは、造形直後の部品に残る積層痕やバリを取り除き、目的に応じた見た目や精度に仕上げる工程です。安定した造形を行うための3dプリンターのメンテナンスと同様に、製品の品質を高めるうえで欠かせないプロセスです。
積層痕ができる原因
積層痕とは、3Dプリンターが材料を層ごとに積み重ねて造形する際に生じる、層と層の境目の凹凸や線状の跡です。FDM方式は樹脂を溶かしながら一層ずつ積み上げるため、積層痕が特に目立ちやすい造形方式といえます。
光造形方式はもともと表面が滑らかで、積層痕が目立ちにくいのが特徴です。そのため、造形後に3dプリンターの塗装などの仕上げを行う際の下地処理も比較的容易です。一方、粉末焼結方式は焼結した粉末が造形物の表面に付着しやすく、表面がさらに粗くなる傾向があります。
表面処理をしないとどうなるか
表面処理をしないままの造形物は、見た目の粗さだけでなく、触感や強度にも影響が及びます。たとえば、物理的な3dプリンターの研磨を怠ると、微細な傷や積層の凹凸からクラックが発生しやすくなります。特に耐久性が求められる金属部品では、表面処理を省くと強度が低下し、製品寿命が短くなるおそれがあります。
金属3Dプリンターの部品は、後加工を経て初めて寸法精度と表面品質を確保できる状態になります。具体的な処理方法は素材や造形方式によって異なるため、次章以降で詳しく解説します。表面処理は見た目を整えるだけでなく、製品としての耐久性と品質を担保する工程です。
表面処理がもたらす品質向上の効果
表面処理を行うことで、造形物の見た目と機能性の両方が向上します。主な効果は次のとおりです。
- 積層痕や凹凸が減り、滑らかな外観になる
- 塗装や接着など後工程との密着性が高まる
- 摩擦や汚れの付着を抑え、耐久性の向上につながる
- 最終製品に近い質感を確認でき、試作段階での評価精度が上がる
適切な表面処理を施して3dプリンターの積層痕を消すことは、造形物を実用レベルの製品に近づけるために欠かせない工程です。
3Dプリンターの表面処理方法5つ
3Dプリンターの表面処理には複数の方法があり、素材や仕上がりの目的に応じて選び分けます。特に、造形時にどうしても必要となる3dプリンターのサポート材の処理は、ほぼすべての造形物で最初に行う共通のステップです。ここでは代表的な5つの方法を紹介します。
サポート材を除去してバリを取る
表面処理の最初のステップは、造形時に付いたサポート材とバリの除去です。デザインナイフやニッパーで大まかな支柱を切り離し、その後に精密やすりで細かい跡を整えます。
サポート跡を丁寧に処理しておくと、次の研磨や塗装の仕上がりが安定します。土台となる工程のため、雑に済ませないことが大切です。
研磨で平滑化する
研磨は、サンドペーパーで積層痕を段階的に削り、表面を滑らかにする方法です。番手は粗いものから細かいものへ順に切り替え、前の番手の1.5倍から2倍程度の細かさへ刻むと傷が残りにくくなります。
段階の目安は次のとおりです。
| 段階 | 番手の目安 | 用途 |
|---|---|---|
| 荒削り | 120〜200番 | サポート痕や大きな段差の除去 |
| 中仕上げ | 320〜400番 | 荒削りで残った傷の除去 |
| 細仕上げ | 600〜800番 | 水研ぎによる均一化 |
| 鏡面仕上げ | 1000〜2000番以上 | 塗装なしで見せる場合の光沢出し |
番手を切り替える際は、前の番手の研磨粉をしっかり除去します。粉が残ったまま次の番手に進むと、粗い傷が再びランダムに入ってしまいます。
化学処理で表面を溶解する
化学処理は、溶剤の蒸気で表面をわずかに溶かし、積層痕をならす方法です。ABSやASAではアセトン蒸気による処理が広く使われています。
代表的な手順は、容器にアセトンを染み込ませた紙を敷き、アルミホイルの上に造形物を置いて蒸気に触れさせるというものです。引火や吸引のリスクがあるため、換気の確保と火気の遠ざけが欠かせません。
塗装で仕上げる
塗装は、サーフェイサーで表面を整えたうえで色を乗せる仕上げ方法です。研磨とサーフェイサーの吹き付けを繰り返すことで、下地が均一になり発色も安定します。
見た目の完成度を重視する試作品や展示用モデルでは、塗装まで行うケースが多く見られます。
ブラスト処理で梨地に加工する
ブラスト処理は、ガラスビーズや樹脂の微細な粒子を高圧で吹き付け、表面全体を均一に研磨する方法です。積層痕が目立たなくなり、マットな梨地の質感に仕上がります。
手作業の研磨に比べて仕上がりのムラが少なく、量産部品や金属3Dプリンターの後加工でよく採用されています。
素材と造形方式別に見る表面処理の選び方
3Dプリンターの表面処理は、素材と造形方式によって適した方法が異なります。ここでは代表的な3つの方式ごとに選び方を整理します。
FDM/FFF方式(PLA・ABSなど樹脂)の場合
FDM方式は溶かした樹脂を積み重ねる仕組み上、積層痕が目立ちやすい方式です。標準的な積層ピッチは0.2mm前後で、光造形方式に比べて段差が大きく出ます。
PLAは熱に弱いため、水を使いながら研磨する水研ぎが向いています。ABSやASAは研磨に加えてアセトン蒸気による化学処理も有効で、少ない工数で滑らかな光沢を得られます。
光造形方式(レジン)の場合
光造形方式は積層ピッチが0.05mm前後と細かく、もともと表面が滑らかな方式です。造形後は余分な樹脂の除去と2次硬化が必要になる点がFDM方式と異なります。
サポート跡の除去とサンドペーパーによる軽い研磨だけで仕上がる場合も多く、より高い透明感や光沢を求める場合はクリアスプレーでの仕上げが有効です。
金属3Dプリンターの場合
金属3Dプリンターの造形物は、サポート材の除去後にショットピーニングやバレル研磨、電解研磨といった後加工を経て、寸法精度と表面粗さを整えます。乾式電解研磨は角が丸まりにくく、表面粗さRa0.5程度まで仕上げられる方法として採用が広がっています。
バレル研磨は大量の部品をまとめて処理できるため、量産部品の後加工に向いています。用途に応じて研磨方式を使い分けることが、コストと品質を両立させるポイントです。
素材・方式別の表面処理比較表
主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 造形方式 | 積層痕の目立ちやすさ | 主な処理方法 |
|---|---|---|
| FDM/FFF(PLA・ABSなど) | 目立ちやすい | 水研ぎ、アセトンベイパー処理、塗装 |
| 光造形(レジン) | 目立ちにくい | 軽い研磨、クリアスプレー |
| 金属 | 用途により異なる | ショットピーニング、バレル研磨、電解研磨 |
自社で扱う素材と造形方式を踏まえたうえで、必要な精度や量産規模に合わせて処理方法を選ぶことが大切です。
表面処理を内製するか業者に依頼するか判断する方法
3Dプリンターの表面処理は、自社で内製する方法と専門業者に外注する方法があります。件数や求める品質に応じて選び分けることが重要です。
内製するメリットと注意点
内製の最大のメリットは、設計変更や試作が発生するたびに、社内で即座に処理まで完結できる点です。あるメーカーの事例では、治具を内製化したことで従来比約1,030万円のコスト削減につながったと報告されています。
一方で、ブラスト処理などの専用研磨機は1台数百万円の設備投資が必要になる場合があります。溶剤や消耗品の管理、作業者の安全確保も自社の負担になる点は押さえておく必要があります。
業者に外注する場合の費用と納期の目安
外注の場合、樹脂部品は小型で数千円から、金属部品は小型でも数万円からが目安です。研磨や塗装といった表面処理はオプション扱いのことが多く、別途費用が発生します。
納期は一般的な樹脂造形で1週間前後が目安ですが、表面仕上げや塗装まで依頼するとさらに数日程度上乗せされます。急ぎの案件では、短納期対応をうたう業者を優先的に検討するとよいでしょう。
内製と外注を選ぶ判断基準
内製と外注のどちらを選ぶかは、依頼頻度と求める品質水準で判断するのが基本です。判断の目安を次にまとめます。
| 状況 | 適した選択 |
|---|---|
| 試作の頻度が高く、都度の設計変更が多い | 内製 |
| 発注件数が少なく、高精度な仕上げが必要 | 外注 |
| 量産部品でまとまった数量を処理したい | 外注(バレル研磨等の設備を持つ業者) |
| 専用設備への投資余力が乏しい | 外注 |
自社の生産計画と予算に照らして、無理のない選択をすることが失敗を避けるポイントです。
まとめ:3Dプリンターの表面処理は方法選びと内製外注の判断で決まる
本記事では、3dプリンターの表面処理が必要になる理由と積層痕の原因から、研磨や塗装、化学処理、ブラスト処理といった代表的な方法、素材と造形方式別の選び方、内製と外注の判断基準までを解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 積層痕は造形方式や素材によって目立ち方が異なり、放置すると見た目だけでなく強度にも影響する
- 研磨・塗装・化学処理・ブラスト処理など、目的に合わせて表面処理方法を組み合わせることが重要
- 依頼頻度や求める精度、設備投資の余力を踏まえて内製と外注を選び分けると失敗が少ない
本記事を通じて、自社の素材や造形方式に合った表面処理方法を選べるようになり、内製と外注のどちらが適しているかも判断しやすくなったはずです。
表面処理の方法選びや外注先の検討でお悩みの際は、まず自社の課題や目的を整理したうえで、専門家に相談することをおすすめします。
3Dプリンター表面処理に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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