3Dプリンターのサポート材除去の方法・工具選びとコツを解説
この記事のポイント
3Dプリンターのサポート材除去は、FDMなら冷ましてから手作業、光造形ならIPA洗浄後に切除、水溶性サポート材なら温水に浸けて溶解させる。ニッパーとラジオペンチを使い分け、少しずつ力を分散させて剥がすことで、造形物を傷つけずに除去できる。
「3Dプリンターでサポート材を除去しようとしたら、造形物の表面が傷ついたり、思ったようにきれいに剥がれなかったりして困っている」。
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 除去に適したタイミングと準備
- サポート材除去に使う工具の選び方
- 素材・造形方式別の除去手順
3Dプリンターのサポート材除去は、造形方式や素材に合った手順と工具を選ぶことできれいに仕上がります。
正しい手順を知れば、表面を傷つけずに短時間で除去できるようになり、造形の失敗にも落ち着いて対処できるようになります。ここから順番に見ていきましょう。
3Dプリンターのサポート材除去に適したタイミングと基本の考え方
3Dプリンターのサポート材除去は、素材によって適したタイミングが変わります。日頃から3dプリンターのメンテナンスを行うのと同様に, 全体の考え方を押さえたうえで、除去前の確認と作業環境づくりを行うと、失敗を大きく減らせます。
サポート材を除去するのに適したタイミング
サポート材を除去するタイミングは、使っている素材で判断が分かれます。PLAなど一般的な熱溶解積層方式の造形物は、3dプリンターノズルから押し出されて室温まで十分に冷ましてから作業するのが基本です。冷めることで素材が本来の硬さに戻り、サポート材との境界がはっきりして、余計な力をかけずに剥がしやすくなります。
一方、高耐熱樹脂などブレークアウェイ方式のサポート材は逆の考え方になります。造形直後の温かいうちに外すのが基本で、冷めてしまった場合は造形室内で温めなおすと除去しやすくなります。
| 素材・方式 | 除去に適したタイミング |
|---|---|
| PLAなど一般的なFDM素材 | 室温まで十分に冷ましてから |
| ブレークアウェイ方式(高耐熱樹脂など) | 造形直後の温かいうちに |
| 水溶性サポート材 | 造形後すぐに水に浸けてよい |
放置しすぎると全体が冷えてサポート材と本体の密着が強くなり、逆に外しにくくなる場合があります。素材ごとの特性を理解したうえで、タイミングを見極めることが大切です。
除去前に確認しておきたい造形物の状態
除去作業に入る前に、造形物の状態を確認しておきます。造形中に3dプリンターノズル詰まりなどのトラブルがなく正常に出力されていれば、サポート材が付いている位置と、本体との接触面積を目で見て把握しておくだけで、どこから手を付けるべきか判断しやすくなります。
薄肉部分や細い突起の近くにサポート材が付いている場合は、特に注意が必要です。力を入れる方向を誤ると、本体側まで欠けてしまうことがあります。
チェックすべきポイントは次のとおりです。
- サポート材と本体の接触面積が広い箇所
- 薄肉・細い形状の近くにあるサポート材
- すでに一部が浮いている、または剥がれかけている箇所
こうした箇所を先に把握しておくと、後の工程でどの工具をどの順番で使うか計画しやすくなります。
除去作業を始める前の環境づくり
除去作業に入る前は、作業環境も整えておきます。第1レイヤーが3dプリンター定着しないといった問題を防ぐのと同様に、準備段階が仕上がりに影響します。手や目を保護するため、手袋と保護メガネを着用します。特にニッパーやカッターを使う際は、破片が飛ぶことがあるため保護メガネは欠かせません。
溶剤を使った除去や、樹脂の粉じんが出る作業をする場合は、換気も重要です。窓を開けるか換気扇を回しながら作業し、必要に応じてマスクも着用します。
作業台には、以下のものをあらかじめそろえておくと効率よく進められます。
- 保護メガネと手袋
- サポート材除去用の工具一式
- 作業中に造形物を安定させる台やクロス
- 除去したサポート材を集めるための容器
環境を整えてから作業を始めることで、安全に加えて仕上がりの質も安定します。
3Dプリンターのサポート材除去に使う工具と選び方
サポート材除去では、道具の選び方が仕上がりを左右します。3dプリンター反りを防ぐための設定調整と同じように、適切な工具を選ぶことが造形物の品質を保つ鍵です。基本の工具から素材別の専用工具、扱う際の注意点まで順番に見ていきます。
ニッパーやラジオペンチなど基本の工具
サポート材除去の基本工具は、ニッパーとラジオペンチです。役割はそれぞれ異なり、ニッパーは切る、ラジオペンチは掴んで剥がすという分担で考えると使い分けやすくなります。
大きなサポート材や格子状で密度の高いサポート材は、一度に剥がそうとすると大きな力が必要になります。先にニッパーで複数の切り込みを入れてブロックごとに分割しておくと、ラジオペンチで掴む部分を確保しやすくなり、少ない力で除去できます。
主な基本工具は次のとおりです。
- 精密ニッパー(先端の刃が小さく、すき間に入れやすいもの)
- 精密ラジオペンチ(先端が細く、サポート材を掴みやすいもの)
- バリ取りナイフ(残った突起を整える際に使用)
- ピンセット(細かい破片をつまむ際に使用)
これらをそろえておけば、ほとんどのサポート材除去に対応できます。
素材別に使い分けたい専用工具
造形方式によっては、専用工具を使うことでより効率よく除去できます。光造形方式では、レジン特有の細かいサポート材に対応した専用ニッパーがあります。先端をより小型化し、開き幅を狭くすることで、狭く複雑な部分でも切りやすく作られています。
金属3Dプリントのサポート除去では、専用の除去装置や加熱制御システムを備えたツールを使う方法もあります。複数の交換式ヘッドを用途に応じて使い分けることで、手作業だけでは難しい部分もきれいに仕上げられます。
工具セットとして販売されているものを選べば、造形方式ごとに工具を探す手間を減らせます。初めて工具をそろえる場合は、基本工具一式がまとまったセットを選ぶと安心です。
工具を安全に扱うための注意点
工具を使う際は、刃先の向きと力の入れ方に注意します。サポート材とモデルのすき間に刃先を入れるときは、無理に押し込まず、少しずつ角度を調整しながら進めます。
刃物を使う作業のため、保護メガネと手袋の着用は欠かせません。特にニッパーで切断する際は破片が飛ぶことがあるため、目を保護する意識を持っておきます。
工具に頼りすぎず、力任せに扱わないことも大切です。次の点を意識すると、工具を安全かつ効果的に使えます。
- 刃先はすき間に沿わせるように入れる
- 力を入れる方向は少しずつ変える
- 一箇所に集中して力をかけない
- 作業中は手元をよく見て確認する
正しい使い方を身につければ、工具本来の性能を発揮しやすくなります。
素材・造形方式別に見るサポート材の除去手順
サポート材の除去手順は、造形方式によって大きく異なります。ここではFDM方式、光造形方式、水溶性サポート材の3つに分けて手順を整理します。
FDM方式(PLA・ABSなど)の除去手順
FDM方式の造形物は、手作業での除去が基本になります。まずニッパーとピンセットを使ってサポート材の大部分を取り外し、その後にホビーナイフやバリ取りナイフで残った小さな塊を削り取ります。
手順は次のとおりです。
- 造形物を室温まで冷ます(ブレークアウェイ方式は温かいうちに作業する)
- ニッパーで大きなサポート材から順に切り離す
- ラジオペンチで残ったサポート材をつまんで剥がす
- ホビーナイフで細かい残留物を削り取る
- 表面を軽く整えて仕上げる
ABS素材の場合は、アセトンなどの溶剤に浸してサポート材を溶かす方法も選べます。手作業に比べて表面が滑らかに仕上がりますが、薬剤の取り扱いには注意が必要です。
| 除去方法 | 特徴 |
|---|---|
| 手作業(ニッパー・ラジオペンチ) | 特別な設備が不要で誰でも扱える。複雑な形状は時間がかかる |
| 溶剤処理(アセトンなど) | 表面が滑らかに仕上がる。薬剤の取り扱いに注意が必要 |
光造形方式(レジン)の除去手順
光造形方式では、サポート材を除去するタイミングが2つに分かれます。洗浄後・二次硬化前に除去する方法と、二次硬化後に除去する方法です。硬化前はレジンがまだ柔らかく、カットしやすいうえに跡が残りにくいという特徴があります。
基本的な手順は次のとおりです。
- IPA(イソプロピルアルコール)を入れた容器を用意する
- 造形物を最初の容器に入れ、軽く振って表面のレジンを落とす
- 別の容器に移し替え、細かいレジンをさらに洗い流す
- 通気性のよい場所で半日から1日ほど自然乾燥させる
- ニッパーやカッターでサポート材を切り離す
- 必要に応じて波長405nmのUVランプで二次硬化を行う
IPAは使用を重ねると濁ってきます。日光に当てて沈殿させれば、上澄みを一次洗浄用として再利用できますが、仕上げの洗浄には新しいIPAを使うときれいに仕上がります。
水溶性サポート材の除去手順
水溶性サポート材は、水に浸けるだけで溶かせる点が大きな特徴です。40度から60度程度の温水に造形物を浸け、数時間から半日ほど置くことでサポート材が溶解します。
形状が複雑だったり、サポート材が厚かったりする場合は、24時間程度かかることもあります。水が濁ってきたら新しい水に交換すると、溶解のスピードが上がります。
除去を早めたい場合は、次のような工夫も有効です。
- 温水を使い、水温をやや高めに保つ
- 水を定期的に軽くかき混ぜる
- 超音波洗浄機を併用する
水に浸けるだけで済むため手間は少ないですが、完全に溶けきるまで待つ時間が必要になる点は理解しておきましょう。
サポート材除去で失敗しないコツとトラブル対処法
サポート材除去では、力加減とトラブル時の対処法を知っておくと安心です。ここでは失敗しないためのコツと、うまくいかなかったときの対処法を紹介します。
きれいに剥がすための力加減とコツ
サポート材を一方向に引き剥がそうとすると、力が一点に集中して造形物が破損しやすくなります。きれいに仕上げるには、力を分散させながら少しずつ進める意識が大切です。
外側の細かく分かれた部分から先に外していくと、全体のサポート材に余裕が生まれます。最後に残る大きな部分も、比較的軽い力で外せるようになります。
コツは次のとおりです。
- 工具はサポート材の根元に浅く当て、少しずつすき間を作る
- 無理に奥まで差し込まず、造形物側を削らないようにする
- 薄肉部分や細かいディテールの近くは特に慎重に力を加減する
- 一箇所に力をかけ続けず、少しずつ角度を変えながら進める
これらを意識するだけで、造形物を傷つけるリスクをかなり減らせます。
サポート材が剥がれない・跡が残るときの対処法
サポート材がうまく剥がれない場合、サポート材と本体の接触面積が広すぎるか、密度が高すぎることが原因になっている場合があります。無理に力を加える前に、一度冷却状態や作業環境を見直してみましょう。
跡が残ってしまった場合は、次の方法で目立ちにくくできます。
- 紙やすりで表面を軽く整える
- 研磨剤入りのスポンジで磨く
- 塗装やコーティングで表面を仕上げる
跡が残る主な原因は、力を一点に集中させてしまうことです。工具を使うときは、面で押さえるのではなく、サポート材の根元をなぞるように少しずつ動かすと、跡が残りにくくなります。
除去作業中に造形物が破損した場合の修復方法
除去中に薄い部分が欠けてしまうことがあります。小さな破損であれば、同じ素材を使って接着し、必要に応じて硬化させることで修復できる場合があります。光造形の場合は、レジンで補修してUVライトで硬化させる方法があります。
ただし、完全に元通りに修復するのは難しい場合が多いため、破損を未然に防ぐことを優先しましょう。薄肉部分にサポート材が付いている箇所は、除去の順番を最後に回し、より慎重に力を加えることで破損のリスクを下げられます。
- 薄肉部分は除去の順番を最後にする
- 破損しやすい箇所は事前に位置を把握しておく
- 修復が必要な場合は同じ素材で補修する
日頃から慎重な作業を心がけることで、修復が必要になる場面自体を減らせます。
まとめ:3Dプリンターのサポート材除去は方式に合った手順と工具選びで決まる
3Dプリンターのサポート材除去は、素材や造形方式に合ったタイミングと手順を選ぶことで、仕上がりが大きく変わります。除去に適したタイミングの見極めから、工具の使い分け、方式別の手順、失敗しないための力加減まで一連の流れを紹介しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- サポート材除去は素材ごとに適したタイミングと環境づくりが重要
- ニッパーやラジオペンチなど基本工具を役割で使い分ける
- FDM・光造形・水溶性サポート材で除去手順が異なる
正しい手順と工具選びを押さえれば、造形物を傷つけずにきれいにサポート材を除去できるようになり、後処理の手間や失敗のストレスを減らせます。
サポート材除去の手順や工具選びで迷ったときは、お気軽にご相談ください。
3Dプリンターのサポート材除去に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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