3Dプリンタ事例10選・業界別の活用法とコスト削減効果を紹介
この記事のポイント
3Dプリンタは自動車・医療・建築・製造業・航空宇宙など幅広い業界の事例で活用されており、開発期間の短縮やコスト削減、設計自由度の向上といった効果が確認できる。中小企業でも治具製作や試作で導入が進み、補助金活用や外部サービスの利用が導入検討の判断材料となる。
「自社の業界に3Dプリンタの事例はあるのだろうか」。導入しても効果が本当に出るのか、不安が消えないという声はよく聞かれます。
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 業界別・企業規模別の3Dプリンタ活用事例
- 事例から分かる導入メリットと注意点
- 導入を検討する際に確認すべきポイント
3Dプリンタの事例を知れば、自社に近い活用イメージがつかめます。
コストや効果への不安も事例を通じて解消できるので、ぜひ最後まで読み進めてください。
業界別に見る3Dプリンタ活用事例
3Dプリンタは自動車、医療、建築、製造業、航空宇宙など幅広い業界で導入が進んでいます。業界ごとに求められる精度やスピードは異なるため、事例を知ることで自社に近い活用イメージがつかめます。
ここでは3dプリンタの代表的な事例を、5つの業界別に紹介します。
自動車業界の事例
自動車業界は3Dプリンタの活用が最も進んでいる業界の一つです。トヨタ自動車は「GRヘリテージパーツプロジェクト」で、生産終了した旧型車の補修部品を3Dプリンティング技術で復刻しています。
ブガッティはサーキット専用のハイパーカーに3Dプリンタ製の部品を多数採用し、軽量化と高強度を両立させました。ミシュランもリサイクル素材を用いたハニカム構造のタイヤ開発に3Dプリンタを活用しています。
自動車向け3Dプリンティング市場は2026年以降も高い成長が見込まれており、試作から量産部品まで用途が広がっています。
医療分野の事例
医療分野での3Dプリンター活用では、患者ごとにカスタムメイドの部品を作れる点が最大の強みです。従来は欧米人向けの定形インプラントを日本人患者の身体に合わせて削る必要がありましたが、3Dプリンタなら一人ひとりの形状に合わせたインプラントを製作できます。
ベルギーでは3Dプリンタで製作したチタン製の顎をインプラントとして移植した事例も報告されています。歯科での3Dプリンター導入も進んでおり、歯科用CTのデータから実物大の模型を作成すれば、手術前のシミュレーションや治療計画の説明も容易になります。
建築業界の事例
建築業界では、工場で部材を印刷して現場で組み立てる方式と、大型プリンタを現場に設置して直接施工する方式の2種類があります。神奈川県内では、複数のピースに分割した部材を印刷して組み立てる倉庫の施工例が実際に完成しています。
清水建設は繊維補強モルタルを使った3Dプリンティング型枠を工事現場に導入しました。この技術によって、従来は難しかった自由曲面の構造体を実現しています。
製造業(治具・試作)の事例
製造業での3Dプリンタ活用は、特に治具や試作品の製作現場で多く見られます。リコーインダストリーは、組立工程で発生していた部品の取り間違えを防ぐ組立治具を3Dプリンタで内製し、生産ラインを再構築しました。
その結果、組立ミスの削減と生産効率の向上を同時に実現しています。ナリス化粧品もFDM方式の3Dプリンタを治具製作に導入し、コスト削減や投資回収の面で想定を上回る効果を得ました。
金属の型を削り出す方法と比べてコストを大きく抑えられる点も、製造業での導入が広がる理由です。比較すると次のような違いがあります。
| 比較項目 | 従来の金型・治具製作 | 3Dプリンタによる製作 |
|---|---|---|
| 製作コスト | 高め | 従来の約6分の1程度 |
| 製作期間 | 数日から数週間 | 数時間から数日 |
| 設計変更への対応 | 型の再製作が必要 | データ修正のみで対応可能 |
航空宇宙業界の事例
航空宇宙業界では、軽量化と複雑形状の一体成形が求められる部品づくりに3Dプリンタが活用されています。人工衛星のジョイント部品は、内部を格子状にしたサンドイッチ形状に変更することで、強度を保ちながら軽量化しています。
JAXAは国産ジェットエンジンの開発や大学との共同研究で、試作と実験を高速で繰り返すために3Dプリンタを利用しています。国際宇宙ステーション内にも3Dプリンタが設置されています。
機材にトラブルが起きた際は、地上から送られたデータをもとに、その場で代替パーツを製作できる体制が整っています。
企業規模別に見る3Dプリンタ導入事例
3Dプリンタは大企業だけでなく、中小企業やスタートアップ、個人事業主にも導入が広がっています。企業規模によって目的や導入方法が異なるため、自社の規模に近い事例を参考にすると判断がしやすくなります。
大企業の3Dプリンタ活用事例
キヤノンでは、マルチコプター開発を手がける企業がキヤノンの3Dプリンタを採用し、部品製作を内製化して試作工程を短縮しました。海外では、BMWが電気自動車のボディパーツ製造に3Dプリンタを取り入れ、一部の部品では3Dプリンターでの量産も進めるなど、軽量で丈夫な部品づくりを実現しています。
大企業の事例に共通するのは、試作から実際の部品製造まで幅広い工程で活用している点です。専用の設備投資ができる分、複数台の3Dプリンタを組み合わせた大規模な運用が特徴です。
中小企業の3Dプリンタ活用事例
静岡県沼津市の金属加工メーカーである東金属産業は、2014年に金属3Dプリンタを初めて導入し、2023年時点で5台を稼働させています。3Dプリンタでしか作れない形状を活かした部品が、航空関連や産業機械の実製品として採用されています。
同社の代表によると、切削加工に比べて3Dプリンタによる製作のほうがコストを抑えたといいます。小ロット生産でも金型費用がかからないため、治具を3Dプリンターで製作して内製するなど、中小企業にとってコスト面のハードルが下がる点が導入の後押しになっています。
スタートアップ・個人事業主の活用事例
個人事業主やスタートアップでは、3Dデータの販売や3Dモデルの制作受注、オーダーメイド商品の製作など、小規模でも始めやすいビジネス形態が広がっています。副業として3Dプリンタを活用する人も増えており、収益は月数万円規模から始めて、時間をかけられるほど拡大しやすい傾向にあります。
3Dプリンティング市場全体も高い成長率で拡大しており、初期投資を抑えながら参入できる環境が整ってきています。もっとも、機材や材料、ソフトウェアへの先行投資は必要になるため、事業計画を立てたうえで始めることが欠かせません。
3Dプリンタ事例から分かる導入メリットと効果
これまでの事例を振り返ると、3Dプリンタの導入効果は主に開発期間の短縮、コスト削減、設計自由度の向上という3つに整理できます。一方で強度や精度に関する注意点もあるため、あわせて理解しておくことが大切です。
開発期間の短縮
従来の試作品製作では、図面作成から試作工場への加工依頼を経て完成品が届くまで、数日から1ヶ月ほどかかることも珍しくありませんでした。外部に頼らず3Dプリンターでの試作を行えば、3D CADデータから短時間かつ低価格で検証を進めることができます。
実際に、1週間から2週間かかっていた試作が一晩程度で仕上がるようになった事例も報告されています。社内だけの打ち合わせで完成まで進められるため、外注のやり取りにかかる時間も削減できます。
コスト削減の効果
3Dプリンターでのコスト削減効果を示す事例も数多くあります。ある試作開発では、1回あたりの試作コストを材料費のみで数千円から1万円台に抑え、人件費を含めても約70%のコストダウンを実現しました。
海外の製造業では、3Dプリンタの導入で製造コストを58%から65%削減した事例や、自動車部品のドアヒンジで80%のコスト削減に成功した事例も報告されています。金型が不要になることと、部品点数を減らせることが、コスト削減の主な要因です。
設計自由度の向上
3Dプリンタは、切削加工では難しい複雑な形状や中空構造を一体で成形できます。人工衛星のジョイント部品を格子状のサンドイッチ形状にした事例のように、強度を保ちながら軽量化するデザインも実現しやすくなります。
設計変更が必要になった場合も、金型の再製作は不要で、データを修正するだけで対応できます。試作を重ねながら形状を最適化していく開発スタイルとの相性がよい点も特徴です。
導入時に注意したいデメリット
一方で、3Dプリンタには精度や強度に関する課題もあります。造形方式や機械の設定、材料、環境の影響を受けやすく、切削加工と比べると寸法精度に限界が出やすい傾向があります。
ネジ穴などの細かい部分は、強度が足りず数回の脱着で欠けてしまうこともあります。用途によっては後加工を組み合わせたり、量産には別の工法を選んだりする判断が必要です。
| 観点 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 期間 | 試作を数時間から数日に短縮 | 大型・高精度部品は別途調整が必要 |
| コスト | 金型不要で小ロットも低コスト | 材料費は用途により変動する |
| 設計 | 複雑形状や中空構造も一体成形 | 強度や精度は工法により差がある |
3Dプリンタ事例を参考にした導入検討のポイント
事例を参考にしながら実際に導入を検討する際は、造形方式の選び方や資金面の支援、外部サービスの活用方法を知っておくと判断がしやすくなります。ここでは導入前に押さえておきたいポイントを紹介します。
造形方式や材料の選び方
3Dプリンタの造形方式には、熱で溶かした樹脂を積み重ねるFDM方式、光で樹脂を硬化させる光造形方式、粉末にレーザーを照射する粉末焼結方式などがあります。FDM方式は価格が手頃で操作もしやすく、光造形方式は精度と表面の滑らかさに優れています。
材料選びも重要です。強度が求められる部品にはABS樹脂、環境負荷を抑えたい用途には植物由来のPLA樹脂が使われるなど、用途に応じた選定が求められます。コストを重視するのか、精度や強度を重視するのかによって、適した方式や材料は変わってきます。
補助金・助成金の活用
3Dプリンタの導入には、ものづくり補助金をはじめとした公的支援制度が活用できます。ものづくり補助金は、中小企業や個人事業主による生産性向上のための設備投資を対象とした国の補助制度です。
補助上限額は従業員規模によって異なり、通常枠でも数百万円から数千万円規模の補助が受けられる場合があります。デジタル化・AI導入補助金や省力化投資補助金など、目的に応じて使える制度が複数あるため、事前に公募要領を確認しておくことが欠かせません。
外部の3Dプリントサービスの活用
自社で3Dプリンタを持たなくても、出力サービスを利用すれば必要なときだけ活用できます。専門スタッフに見積もりの段階から相談できるため、初めて3Dプリンタを使う企業でも安心して依頼しやすい点が特徴です。
導入前に試しに外部サービスを使ってみたり、自社の設備で対応できない仕様のものだけを外注したりする使い方もあります。まずは小さく試してから本格導入を検討する進め方も選択肢の一つです。
導入前に確認すべきこと
導入を検討する際は、造形したい部品の用途や求める精度、想定する生産量を整理しておくことが大切です。次のような観点で確認すると、自社に合った選択がしやすくなります。
- 造形したい部品の材質や強度の要件
- 想定している生産数量と生産頻度
- 社内でオペレーションできる人員体制
- 初期投資と補助金活用の可否
これらを整理したうえで、事例を参考にしながら自社に合った3Dプリンタや外部サービスを選ぶことが、導入後の失敗を防ぐことにつながります。
まとめ:3Dプリンタ事例から自社に合った活用法が見える
本記事では、3Dプリンタの事例を業界別・企業規模別に紹介し、導入によって得られるメリットや注意点、検討する際のポイントまで解説しました。自動車や医療、建築、製造業、航空宇宙といった業界を問わず、開発期間の短縮やコスト削減、設計自由度の向上といった効果が事例から確認できます。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 3Dプリンタは業界や企業規模を問わず幅広い事例で導入されている
- 開発期間短縮とコスト削減、設計自由度向上が主な導入効果である
- 造形方式や補助金、外部サービスの活用が導入検討の判断材料になる
3Dプリンタの事例を知ることで、自社の業界や規模に近い活用イメージがつかめ、コストや効果への不安を解消しやすくなります。導入を検討する際は、まず自社の用途に合った造形方式や外部サービスを確認することから始めてみてください。
3Dプリンタの導入についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
3Dプリンタの事例に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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