3Dプリンターのコスト削減方法・事例と成功のポイントを解説
この記事のポイント
3Dプリンターのコスト削減は、金型不要による費用圧縮、部品点数削減、試作期間短縮、小ロット生産の4つの仕組みで実現する。自動車や治具製作では58〜95%の削減事例があり、造形方式ごとにランニングコストは異なる。
「3Dプリンターを使ったコスト削減は本当に実現できるのか、社内にどう説明すればいいのか分からない」
こうした疑問に、この記事で答えます。
本記事の内容
- 3Dプリンターでコスト削減できる仕組み
- 業界別のコスト削減事例
- ランニングコストと失敗しないための判断基準
3Dプリンターは金型が不要になり、部品点数の削減や試作期間の短縮も進むため、条件がそろえば製造コストを大きく減らせます。
造形方式や導入方法を正しく選べば、社内説明にそのまま使える根拠もそろいます。3dプリンター コスト削減の全体像を、最後まで読み進めてご確認ください。
3Dプリンターでコスト削減できる仕組み
3Dプリンターがコスト削減につながる理由は、従来の製造工程で必要だった工程や部材を丸ごと省ける点にあります。金型不要、部品点数削減、試作期間短縮、小ロット対応という4つの仕組みが組み合わさり、トータルコストを下げます。多くの3Dプリンタの事例でも導入効果が示されている通り、ここから、それぞれの仕組みを具体的に見ていきます。
金型が不要になり費用を削減できる
射出成形や鋳造による量産では、事前に金型の製作が必要で、金型費用だけで数十万円から数百万円かかることも珍しくありません。3Dプリンターは3Dデータをもとに材料を一層ずつ積み上げて造形するため、金型そのものが不要です。
Rolleri社の事例では、FDM方式の3Dプリンターの活用により、従来の成形・鋳造に比べて約65%のコスト削減を実現しています。金型の製作費に加え、保管費用や修正費用もかからなくなる点が、コスト削減の大きな要因です。
部品点数を減らして工数を削減できる
3Dプリンターは複数のパーツを一体化した状態で造形できます。従来は複数の部品を個別に製作して組み立てる工程が必要でしたが、製造業での3Dプリンタ活用による一体成形によって、組み立て工程そのものを減らせます。
パーツ点数の削減は、組み立てにかかる人件費や工程管理の手間も同時に減らします。設計段階で組み合わせやすい形状にしておくと、後工程のコストをさらに抑えられます。
試作期間を短縮してコストを抑えられる
従来の試作は、金型や治具の調整に1〜2週間かかることも珍しくありませんでした。自社内で3Dプリンターで試作を行えば、3D CADデータをそのまま造形に使えるため、外注時の調整や準備の工程を省けます。
従来1〜2週間かかっていた試作を一晩程度で終え、約90%の時間短縮を実現した事例もあります。試作を重ねやすくなり、設計の完成度を高めながら開発全体のコストを下げられます。
小ロット生産で在庫コストを削減できる
3Dプリンターは設計データをデジタル在庫として保管でき、必要な数量だけをそのつど造形可能です。金型を使う量産方式は、まとめて生産して在庫として保管する必要がありましたが、3Dプリンターでの量産技術を活かせば、過剰な在庫を抱えるリスクを避けられます。
| 比較項目 | 金型を使う量産方式 | 3Dプリンターによる小ロット生産 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 金型費用が高額になる | 金型費用が不要になる |
| 生産単位 | まとめて量産するのが前提 | 必要な数だけ造形できる |
| 在庫リスク | 過剰在庫が発生しやすい | データ在庫で在庫リスクを抑制できる |
設計変更が発生した場合も、金型を作り直す必要はなく、データを修正するだけで対応できます。そのため、変更コストも小さく抑えられます。
3Dプリンター導入によるコスト削減事例
3Dプリンターのコスト削減効果は、業界や用途によって幅があります。ここでは自動車業界、治具や工具製作、医療機器分野、建設・プラント業界の具体的な事例を紹介します。数値を見ることで、自社の状況に近い事例を判断材料にできます。
自動車業界での削減事例
自動車業界は3Dプリンターの導入が最も進んでいる業界のひとつです。フォードはインテークマニホールドの試作において、従来1台あたり約50万ドルかかっていたコストを、3Dプリンターの活用で約3000ドルまで抑えました。
日産自動車はスペイン工場に3Dプリンターを導入し、製造コストを95%削減、製造時間も1週間から1日に短縮しています。設計と造形条件を最適化した部品では、最大80%のコスト削減と35%の軽量化を同時に実現した例も報告されています。
治具や工具製作での削減事例
治具や工具の製作は、3Dプリンターのコスト削減効果が出やすい領域です。BMWは組み立て治具の製造において、従来のCNC加工では1個あたり420ドルかかっていたコストを、3Dプリンターの活用で178ドルまで下げ、約58%のコスト削減とリードタイムの大幅な短縮を実現しました。
外部委託していた治具製作を内製化することで、調達リードタイムの短縮と外部委託費用の削減を同時に進められる点も、治具製作領域の特徴です。
医療機器分野での削減事例
医療機器分野では、患者ごとに形状が異なる義手や義足、自助具の製作に3Dプリンターが活用されています。従来はオーダーメイド製作に時間と費用がかかっていましたが、3Dプリンターであれば体格や症状に合わせた造形を低コストかつ短期間で行えます。
一人ひとりに合わせた製作が前提となる医療機器分野では、量産を前提とした金型方式よりも、3Dプリンターのほうがコスト面で優位になりやすい傾向があります。
建設・プラント業界での削減事例
建設・プラント業界でも、3Dプリンターの導入によるコスト削減が進んでいます。プラント工事の現場では、3Dプリンターで製作した部材や型枠を活用することで、工程の削減や人件費、エネルギー使用量の抑制につながる事例が報告されています。
化粧品メーカーの生産設備でも、外部への加工発注を3Dプリンターによる内製に切り替えたことで、約1000万円規模のコスト削減を実現した事例があります。業界を問わず、外部委託の一部を内製化する動きがコスト削減の共通点といえます。
3Dプリンターのランニングコストを方式別に比較
3Dプリンターは造形方式によって、本体価格だけでなく材料費や後処理費用といったランニングコストも大きく異なります。導入前に方式ごとの費用感を把握しておくと、コスト削減の見込みを正確に判断できます。
FDM方式のランニングコスト
FDM方式は熱で溶かした樹脂を積層する方式で、業務用の本体価格は30万円から500万円程度が相場です。一般的なPLAフィラメントは1kgあたり2000円から5000円程度で、方式のなかでは材料費が最も抑えられます。
ポリカーボネートやカーボンファイバー配合材料など特殊なフィラメントを使う場合は、1kgあたり6000円から数万円程度に上がります。試作や治具製作など、精度をそこまで求めない用途で3Dプリンターで部品製作を行うのであれば、FDM方式がコストを抑えやすい選択肢です。
光造形方式のランニングコスト
光造形方式は液状のレジンに光を当てて硬化させる方式で、本体価格は50万円から2000万円程度と幅があります。低価格帯の機種で使うレジンは500gあたり1000円から6000円程度、高精度な用途向けのレジンは1リットルあたり1万円から5万円程度です。
光造形方式は造形後の洗浄が必須で、無水エタノールやIPAといった洗浄液のコストも継続的に発生します。精度を重視する試作や小型部品の製作に向いていますが、消耗品費はFDM方式より高くなりやすい点に注意が必要です。
金属造形方式のランニングコスト
金属造形方式は、本体価格が3000万円から3億円程度と、業務用のなかでも高額な部類に入ります。金属フィラメントの材料費は、ステンレスで1kgあたり2万円から6万円程度、チタンでは1kgあたり10万円以上になることもあります。
造形後には炉内での脱脂や焼結といった後処理が必要で、自社で対応できない場合は専門業者への委託費用がかかります。委託費用の目安は1kgあたり4万円から5万円程度です。強度や精度が求められる最終製品の製造に向いていますが、ランニングコストの高さは事前に見込んでおく必要があります。
導入コストとランニングコストの関係
3Dプリンターは、本体価格が高くなるほど材料費や保守費用も高くなる傾向があります。導入時には本体価格だけでなく、設置工事費や付帯設備費、材料費、保守費用まで含めた全体のコストで比較することが重要です。
| 造形方式 | 本体価格の相場 | 材料費の傾向 |
|---|---|---|
| FDM方式 | 30万〜500万円 | 最も安価 |
| 光造形方式 | 50万〜2000万円 | 中程度、洗浄液コストが加わる |
| 金属造形方式 | 3000万〜3億円 | 高額、後処理委託費が加わる |
用途に対して過剰な精度や強度を持つ機種を選ぶと、ランニングコストがかさみ、コスト削減効果が薄れてしまいます。自社の用途に見合った方式を選ぶことが、結果的にコスト削減の近道になります。
3Dプリンターのコスト削減を成功させるポイント
3Dプリンターは万能な選択肢ではなく、条件によってコスト削減効果が薄くなる場合もあります。ここでは、導入前に確認しておきたい4つのポイントを紹介します。
①:内製と外注のコストを比較する
3Dプリンターを内製するか外注するかは、稼働率によって判断が変わります。頻繁に造形が必要な場合は、自社購入やリースによる内製のほうがコストを抑えやすくなります。
一方、稼働頻度が低い場合は、初期費用やランニングコスト、専門人材の人件費まで含めると、外注のほうが安くなるケースが多くあります。内製は納期の早さに優れ、外注は品質や使用できる素材の幅に優れる傾向があるため、自社の優先順位に合わせて判断してください。
②:コスト削減できないケースを見極める
3Dプリンターは、量産を前提とした射出成形と比べると、製品1個あたりの単価が高くなる場合があります。特に、同一形状を大量生産するケースでは、金型を使う従来方式のほうがコストを抑えられることもあります。
導入前には、コストの確認とビジネス拡大への効果をあわせて算出し、費用対効果を見積もることが欠かせません。目的を明確にせずに導入すると、期待した削減効果が得られないまま運用コストだけが積み上がるおそれがあります。
③:造形方式や機種選定の基準を持つ
造形方式によって本体価格やランニングコストは大きく異なります。用途に対して過剰な精度や強度を持つ機種を選ぶと、材料費や後処理費用がかさみ、コスト削減の効果が薄れてしまいます。
FDM方式は試作や治具製作、光造形方式は精度が求められる小型部品、金属造形方式は強度が必要な最終製品といったように、用途に応じた方式選定の基準を持つことが重要です。
④:段階的に導入して投資リスクを抑える
3Dプリンターの導入は、目的とKPIを明確にしたうえで、小規模な範囲から段階的に始めることでリスクを抑えられます。まずは試作や治具製作といった限定的な用途で効果を検証し、成果を確認してから対象範囲を広げる進め方が有効です。
いきなり高額な機種を導入すると、想定した稼働率に届かず、投資回収に時間がかかることがあります。小さく始めて実績を積み上げることが、結果的に確実なコスト削減につながります。
まとめ:3Dプリンターのコスト削減は仕組みと事例を押さえれば実現できる
ここまで、3Dプリンターでコスト削減を実現する仕組み、業界別の事例、造形方式別のランニングコスト、成功させるためのポイントを紹介しました。3dプリンター コスト削減の効果は、金型不要や部品点数削減、試作期間短縮といった仕組みを理解し、自社の用途に合った方式や導入方法を選ぶことで見えてきます。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 金型不要・部品点数削減・試作期間短縮・小ロット対応の4つの仕組みがコスト削減を生む
- 自動車・治具・医療機器・建設など業界ごとに削減率の事例が異なる
- 造形方式ごとのランニングコストを踏まえ、内製と外注を比較して段階的に導入する
これらのポイントを踏まえれば、3Dプリンターの導入検討にあたって社内で説明できる根拠を用意でき、投資判断の精度も高まります。造形方式や運用体制を自社の用途に合わせて選ぶことで、無理なくコスト削減を進められます。
導入方法や機種選定に迷う場合は、専門家への相談も有効な選択肢です。まずはお気軽にお問い合わせください。
3Dプリンターのコスト削減に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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