3Dプリンター部品製作の依頼方法とコストの目安を詳しく解説

導入

この記事のポイント

3Dプリンターによる部品製作は、金型を使わずに少量の試作品や廃盤の補修部品を短納期かつ低コストで製造できる。造形方式や材料によって精度や強度は変わり、数千個規模の量産では金型を使う方法のほうがコストの面で有利になる。

3Dプリンター部品製作の依頼方法とコストの目安を詳しく解説

「3Dプリンターで部品製作をしたいけれど、精度やコストが実用に耐えるのか判断できず、社内に説明できる根拠もないまま導入をためらっている」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 3Dプリンターの部品製作に向く部品と向かない部品の見極め方
  • 部品製作のメリットとコストの実態
  • 依頼の流れと注意点

3Dプリンターは、向いている部品を選べば、少量の試作品や補修部品を短納期かつ低コストで調達できる現実的な手段です。

本記事を読めば、自社の用途に3Dプリンターが向いているかを判断できるようになり、依頼先への説明にも自信を持てるようになります。ぜひ最後まで読み進めてください。

3Dプリンターの部品製作に向く部品と向かない部品

3Dプリンターは金型を使わず、データから直接部品を造形する装置です。他の3Dプリンタの事例でも様々な部品製作が試みられていますが、形状や用途によって得意不得意があります。3Dプリンターで部品製作を検討する際は、まず自社が作りたい部品がどちらに当てはまるかを見極めることが重要です。

1個から製作できる部品

3Dプリンターは金型を必要としないため、1個からでも部品を製作できます。金型を使う成形方法では、型の製作費用がかかるため少量生産には向きません。

試作品や社内で使う特注パーツなど、数個から数十個程度の少量生産では3Dプリンターが有利です。設計変更が生じても、データを修正するだけで対応できるため、製造業での3Dプリンタ活用として少量生産との相性の良さにつながっています。

廃盤部品や補修部品

生産が終了した製品の補修部品や、金型が失われた廃盤部品の再現にも3Dプリンターは向いています。まず3Dプリンターで試作を試みてから、スキャンデータをもとに金型なしで部品を復元できます。

自動車業界では、日産が生産終了した旧車向けの補修部品を3Dプリンターで復刻生産する取り組みを進めています。鉄道業界でも、欧州の鉄道会社が金属3Dプリンターを使って補修部品の調達期間を大幅に短縮した事例が報告されています。

複雑な形状や内部構造を持つ部品

金型を使う成形方法では、刃物が入らない形状や型から取り出せない形状の製作が困難です。3Dプリンターは材料を一層ずつ積み上げる方式のため、内部に空洞や流路を持つ複雑な形状も一体で造形できます。

入り組んだ複数の部品を一つにまとめて成形できる点も強みです。部品数が減ることで、組み立て工程の簡素化にもつながります。

大量生産や高精度な嵌合が必要な部品

一方で、3Dプリンターには向いていない部品もあります。積層造形は一層ずつ材料を積み上げるため、造形時間が数量に比例して長くなり、数千個以上の大量生産では金型成形のほうがコスト面で有利です。

積層に伴う層状の凹凸や誤差をなくすことも簡単ではありません。他の部品と隙間なくはめ合わせる高精度な嵌合部品では、造形後に切削加工などの追加工が必要になる場合があります。金属3Dプリンターの場合は、造形中に部品を支えるサポート材の除去にも手間がかかる点に注意が必要です。

3Dプリンターで部品製作するメリットとコストの実態

3Dプリンターでのコスト削減効果は大きく、金型を使う従来の製造方法にはないメリットがあります。ここではコスト面の実態も含めて整理します。

金型が不要でコストを抑えられる

金型を使う成形方法では、部品の形状ごとに専用の型を製作する必要があり、初期費用が高額になりがちです。3Dプリンターはデータから直接造形するため、金型の製作費用や保管スペースが不要になります。

海外の企業導入事例では、金属工具の製造コストが3Dプリンターの活用によって約6割削減された報告もあります。少量生産や試作段階では、金型を使う方法よりも総コストを抑えやすい点が大きな魅力です。

設計変更に柔軟に対応できる

金型を使う方法では、設計を変更するたびに型を作り直す必要があり、時間と費用がかかります。3Dプリンターであれば、3Dデータを修正するだけで次の造形に反映できます。

複数の部品を一体化した形状で造形できる点も特徴です。部品点数が減ることで、組み立てにかかる手間や人件費の削減にもつながります。

短納期で部品を用意できる

外部に金型製作を発注すると、完成までに1か月以上かかることも珍しくありません。3Dプリント受託サービスを利用すれば、1週間程度で部品を受け取れるケースもあります。

急な設計変更や少量の試作依頼にも、金型を使う方法より短い期間で対応できる点は、3Dプリンターならではの強みです。

造形方式ごとの価格相場

3Dプリンターの本体価格は造形方式によって大きく異なります。主な相場は次のとおりです。

造形方式本体価格の目安
FDM方式(業務用)30万円〜500万円
光造形方式(業務用)50万円〜2000万円
金属3Dプリンター3000万円〜3億円

材料費にも違いがあり、金属フィラメントはステンレスで1kgあたり2万円から6万円、チタンでは10万円を超えることもあります。本体価格だけでなく、材料費や保守費用まで含めて費用対効果を検討することが大切です。

3Dプリンターで部品製作を依頼する流れ

3Dプリンターでの部品製作を外部サービスに依頼する場合、いくつかの手順を踏んで進めます。事前に流れを把握しておくと、依頼から納品までスムーズに進められます。

①:3Dデータを準備する

まず部品の3Dデータを用意します。CADで設計したデータがあれば、STL形式やSTEP形式に変換して提出します。STL形式は形状のみを表現したデータで、多くの3Dプリンターに対応した標準的な形式です。

3Dデータを持っていない場合も、現物や図面から3Dスキャンでデータ化する方法や、イラストや写真をもとにデータ作成から依頼できるサービスもあります。スキャンデータは表面が粗くなる場合があるため、点群処理ソフトで整形してから提出すると仕上がりが安定します。

②:造形方式と材料を選ぶ

部品の用途に応じて、FDM方式や光造形方式、金属方式などの造形方式を選びます。強度を重視するならFDM方式、精度や表面の滑らかさを重視するなら光造形方式が適しています。

材料も樹脂か金属かで選択肢が変わります。耐熱性や強度など、部品に求める性能をもとに、依頼先の担当者と相談しながら決めることをおすすめします。

③:見積もりと納期を確認する

多くのサービスでは、STLデータをアップロードすると自動で見積もりが算出されます。高精度な部品や特殊な仕様の場合は、担当者による個別見積もりになることもあります。

納期はサイズや数量、材料、仕上げ加工の有無によって変わります。一般的な小型パーツであれば、データ確定後数日から1週間程度で出荷されるケースが多いです。

④:仕上げ加工をして受け取る

造形が完了した部品には、サポート材の除去や表面の研磨といった仕上げ加工が施されます。用途によっては塗装や切削加工を追加する場合もあります。

仕上げ加工まで完了した部品を受け取ったら、実際に取り付けて動作や寸法を確認します。想定と違う点があれば、データを修正して再製作を依頼できる点も3Dプリンターならではの利点です。

3Dプリンターで部品製作する際の注意点

3Dプリンターで部品製作を成功させるには、精度や設計、依頼先の選定について事前に理解しておくべき点があります。

精度と強度の限界

3Dプリンターの寸法精度は、X・Y方向で平均0.1mmから0.2mm程度、工業用機種では0.05mm程度の誤差に収まります。一方、積層方向にあたるZ方向は積層ピッチの影響を受けやすく、狙った寸法どおりに仕上がらないことがあります。

高精度な嵌合が必要な部品では、造形後に切削加工などの追加工を行うことで、誤差を0.05mm以内に抑えられます。強度についても、積層面が弱点になりやすいため、荷重がかかる方向を考慮した設計が求められます。

積層方向を考慮した設計

FDM方式では、溶かした樹脂を積み重ねる過程で熱収縮による反りが発生しやすくなります。形状によっては、水平方向の誤差よりも反りの影響のほうが仕上がりを左右します。

積層方向をどこに設定するかによって、強度や表面の仕上がりが変わります。荷重がかかる方向や見た目を重視する面を考慮したうえで、積層方向を決めることが設計段階で重要です。

依頼先の選び方

外部の3Dプリンター試作サービスなどの依頼先を選ぶ際は、対応している造形方式や素材の種類、仕上げ加工への対応範囲を確認します。研磨や塗装、ネジ加工など、必要な後加工に対応しているかは事前確認が欠かせません。

価格の安さだけで選ぶと品質が安定しない場合があるため注意が必要です。納期についても、公開されている目安をそのまま信じず、実際のデータをもとに見積もりを取って確認することをおすすめします。

まとめ:3Dプリンターの部品製作は少量短納期のものづくりを実現する

本記事では、3Dプリンターの部品製作に向く部品と向かない部品の見極め方から、メリットとコストの実態、依頼の流れ、注意点までを解説しました。

本記事のポイント

  • 1個からの少量生産や廃盤部品の復元など向いている部品を見極めることが重要
  • 金型が不要なため、コスト削減と短納期化を実現できる
  • 精度の限界を理解し、依頼先を慎重に選ぶことで導入の失敗を防げる

本記事を通じて、3Dプリンターによる部品製作が自社の課題に対する現実的な選択肢になり得ることがおわかりいただけたと思います。

導入や依頼をご検討の際は、まず自社が製作したい部品の形状や数量を整理したうえで、専門家に相談することをおすすめします。

3Dプリンター部品製作に関するよくある質問

参考文献

  1. 金属積層造形の普及拡大・活用促進に向けた検討会(経済産業省)
  2. 金属3Dプリンターとは?(産総研マガジン)
  3. 日産の新技術を活用した「NISMOヘリテージパーツ」を商品化(日産自動車)

執筆者

3D With 編集部
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編集部

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監修者

3D Withリサーチチーム
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リサーチチーム

3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。

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