3Dプリンター教育の活用事例とメリット・デメリット完全紹介
この記事のポイント
3Dプリンター教育は小中学校のクラブ活動から大学の研究まで活用が広がり、STEM教育・STEAM教育の実践教材として注目されています。導入費用は家庭用5万円から、高校向けにはDXハイスクールで最大1,200万円の補助が受けられます。
「3Dプリンター教育が話題だと聞くけれど、実際に学校や大学でどう活用されているのか、自校や我が子に合う導入方法が分からない。」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 3Dプリンター教育が注目される背景
- 学校・大学での活用事例
- 導入のメリット・デメリットと始め方
3Dプリンター教育は、STEM教育やSTEAM教育、研究活動を後押しする手段として広がっています。
本記事を読むことで、教育現場での具体的な活用事例からメリット・デメリット、導入方法まで一通り把握できます。自校や自分に合う3Dプリンター教育の始め方を判断できるようになるので、まずは注目される背景から見ていきましょう。
3Dプリンター教育が注目される背景
3Dプリンター教育は、STEM教育やSTEAM教育の広がりとともに注目度が高まっています。これは将来の3Dプリンタービジネスを担う人材育成にも寄与するものと期待されています。GIGA端末の普及で役割を終えつつあったPC教室を、ものづくり学習の場として整備し直す学校も増えてきました。
背景にあるのは、思考力や課題解決力を育む教育方針への転換です。加えて、3Dプリンター自体の価格が下がり、操作性も改善されています。まずは関連する教育概念の違いから整理します。
STEM教育・STEAM教育とは
STEM教育は、科学・技術・工学・数学の頭文字を取った教育概念です。4つの領域の知識を横断的に活用し、実際につくることを通じて学ぶ点に特徴があります。
STEAM教育は、STEM教育に芸術の要素を加えたものです。文系・理系という枠組みにとらわれず、課題を発見して解決し、社会的な価値を生み出せる人材を育てることを目指します。
3Dプリンターは、頭の中にあるアイデアをすぐ立体物として形にできる教材です。STEM教育・STEAM教育の実践に適した存在として位置づけられており、将来的に3Dプリンター活用技術検定などの取得に興味を持つきっかけにもなります。
プログラミング教育との違い
プログラミング教育は、未来のエンジニアを育てることが目的ではありません。思考力を育てることに重点を置いた教育です。
科学・技術・工学・数学に特化している点で、STEM教育・STEAM教育と重なる部分もあります。プログラミング教育は、STEM教育・STEAM教育を実践するための前段階と位置づけられることが多いです。
3Dプリンターを使った学習では、プログラミングで設計したデータをそのまま立体物として出力できます。両者を組み合わせた実践がしやすい点も特徴であり、3Dプリンターセミナーなどでも定番の教育テーマとして取り上げられています。
国内における3Dプリンター教育の導入状況
国内の小学校・中学校・高等学校・高等専門学校を対象にした調査では、3Dプリンターの導入を検討していると回答した学校が65%にのぼりました。授業での活用にあたっては3Dプリンター資格を持つ教員の必要性も議論されており、中学校の教材整備方針にも3Dプリンターが追加されるなど、公的な後押しも進んでいます。
世界の教育分野における3Dプリンティング市場は、2025年の15億7,000万米ドルから2033年には47億米ドル規模まで拡大すると見込まれ、CAGRは14.8%です。国内でも、使われなくなったPC教室を3Dラボとして整備し、課題解決型学習の場とする学校が増えています。
学校・大学における3Dプリンター教育の活用事例
3Dプリンター教育は、小中学校から大学まで幅広い場面で活用が広がっています。学びの段階や目的によって、使われ方には違いがあります。
代表的な活用事例を、国内と海外に分けて見ていきましょう。
小中学校での授業やクラブ活動での活用
小中学校では、クラブ活動や図工・美術・技術の時間での活用が中心です。総合的な学習の時間で、社会課題を検討する教材として使われる例もあります。
子供たちが想像したイメージをまず3Dモデリングで画面上に落とし込み、そのデータを3Dプリンターで出力する流れが一般的です。頭の中にしかなかったイメージが立体物になることで、議論を通じてより良い形状へブラッシュアップするPBL学習にもつながります。
一方、授業そのものでの実践例はまだ少ないのが実情です。CADソフトの操作技能が必要な点と、造形に長い時間がかかる点が、授業への本格導入を難しくしています。これらをクリアして3Dプリンターのデータ販売を行えるレベルの高度なスキルを培うには、相応の工夫が必要です。
大学における研究・ものづくりへの活用
大学では、研究室単位での実験や試作に3Dプリンターが使われています。京都産業大学は研究に必要な材料の制作に、立命館大学は自立移動ロボットのパーツ開発に活用しており、帝京大学ではレーシングカーのパーツ開発にも使われています。
山形大学ではゲルを立体造形する3Dゲルプリンターが開発され、生活用途から食品ロスの解決まで応用が広がっています。名古屋大学など複数の大学では、3Dプリンターの規格に準拠した金属3Dプリンターに関する研究も進められています。
海外における3Dプリンター教育の導入事例
イギリスでは、教育現場への3Dプリンター普及を国の政策として進めています。50万ポンドの資金を学校に投じ、60校への導入を順次進めている状況です。
フィンランドは、主要4都市の学校への3Dプリンター導入費用として、総額3万ユーロの公費を投じています。中国では約40万校の小学校への導入と、扱える教員の育成が同時に進められており、制作した3Dプリンターの作品販売まで視野に入れた実践教育も行われています。
3Dプリンター教育を導入するメリットとデメリット
3Dプリンター教育には、子供の学びを深めるメリットがある一方、現場ならではの課題も存在します。導入を検討する際は、両方をバランスよく理解しておくことが大切です。
まずはメリットから確認しましょう。
想像力や学習意欲を高めるメリット
3Dプリンターは、頭の中にあるアイデアや発想を、正確な立体物としてすぐに形にできる点が大きな特徴です。作った形は簡単に改良を加えられるため、答えのない問いに挑戦する楽しさを体験できます。
理論的な内容も実際に形が見えることで理解しやすくなり、理科や数学に苦手意識を持つ生徒が積極的に取り組む例も報告されています。教科書を見るだけの学習に比べて吸収力が高まり、実践力や創造性、学習意欲の向上につながる点も評価されています。
| 観点 | 得られる効果 |
|---|---|
| 創造性 | アイデアをすぐ立体物として形にできる |
| 理解度 | 理論的な内容を実物で確認でき理解が深まる |
| 学習意欲 | 実践を通じた学びで意欲が高まりやすい |
導入前に押さえておきたいデメリット
3Dプリンターは、造形に長い時間がかかる点が大きな課題です。20センチメートル程度の模型でも10時間以上かかる場合があり、授業内で完結させにくい面があります。
導入コストや教員の研修、安全性の確保も見逃せない課題です。高温になる部品や可動部があるため、取り扱いには注意が必要で、換気などの安全対策も欠かせません。
3Dデータを作成するCADソフトの操作技能が必要な点も、授業への本格導入を難しくする要因です。学校間で3Dプリンターやサーバーを共有し、教員研修の機会を継続的に設ける仕組みづくりが、こうした課題への対応策として提案されています。
3Dプリンター教育を導入する方法
3Dプリンター教育を始めるには、費用の目安と使える補助制度、確認すべきポイントを事前に押さえておくことが大切です。順番に見ていきましょう。
導入費用の目安
家庭用の熱溶解積層方式であれば、5万円から20万円程度が相場です。複数の生徒が同時に使う場面を想定するなら、高機能な1台を購入するより、この価格帯を複数台そろえるほうが実用的とされています。
品質や対応素材の幅を重視する業務用機種は、30万円以上が目安です。実際に千葉県船橋市では、全市立中学校27校に樹脂3Dプリンターを導入し、費用は378万円だったと公表されています。
活用できる補助金制度
ものづくり補助金は中小企業・小規模事業者向けの制度のため、公立学校や学校法人は対象外です。教育機関が導入費用を補うには、別の枠組みを検討する必要があります。
高等学校向けには、DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)という支援策があります。新規採択校の場合、基本1,000万円、重点的な取り組みを行う学校は1,200万円まで補助を受けられる仕組みです。3Dプリンターは、この支援対象となる設備備品費の例として挙げられています。
小中学校では、自治体独自の予算や寄贈事業を活用して導入した事例もあります。DXハイスクールのような国の支援策と、自治体・民間の取り組みをあわせて確認することが、費用負担を抑える近道です。
導入前に確認すべきポイント
まず、授業・クラブ活動・研究のどの用途を主目的にするかを明確にすることが大切です。用途によって、必要な機種の性能や台数が変わります。
CADソフトの操作技能をどう補うかも、事前に検討しておきたいポイントです。教員研修の機会や、外部の教育プログラムとの連携をあわせて計画すると、導入後の運用がスムーズになります。
まとめ:3Dプリンター教育は目的の明確化と体制づくりから始める
ここまで、3Dプリンター教育が注目される背景、学校・大学での活用事例、メリット・デメリット、導入方法を紹介してきました。STEM教育やSTEAM教育の広がりとともに、授業・クラブ活動・研究のそれぞれで活用の幅が広がっています。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- STEM教育・STEAM教育の広がりとともに導入が進んでいる
- 小中学校から大学まで幅広い活用事例がある
- 費用や体制を踏まえた計画的な導入が欠かせない
本記事を読んだことで、3Dプリンター教育の全体像から具体的な導入の進め方まで把握できたはずです。用途と予算に合った選択をすれば、学びの効果を無理なく引き出せます。
まずは自校や自分の目的を明確にし、使える支援策や体制づくりから検討を始めてみてください。
3dプリンター 教育に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。
監修者
リサーチチーム
3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。
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