3Dプリンターの規格とは?ISO・JISの違いをわかりやすく解説

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この記事のポイント

3Dプリンターの規格はISOとASTMが策定する国際規格を軸に、国内向けのJIS規格やAM製造サイト認証などの品質保証規格まで段階的に整備されています。発注時は用途や造形方式、データ形式や材料規格への準拠状況を確認すると安心です。

3Dプリンターの規格とは?ISO・JISの違いをわかりやすく解説

「3Dプリンターの規格にはISOやASTM、JISなどいろいろな名前が出てくるけれど、結局どれが何を定めているのかわからない。」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 3Dプリンターの規格が必要とされる理由と全体像
  • 国際規格と国内規格の種類や役割
  • 規格を選定・発注に活かすポイント

3Dプリンターの規格は、ISOとASTMが共同で策定する国際規格を軸に、国内向けのJIS規格、そして製造サイトの認証基準まで段階的に整備されています。

本記事を読めば、規格の全体像から国際規格・国内規格それぞれの役割、発注や選定の場面での活かし方まで一通り理解でき、規格名に振り回されずに判断できるようになります。まずは規格の全体像から見ていきましょう。

3Dプリンターの規格とは何か

3Dプリンターの規格とは、造形方式や材料、品質保証の方法などを統一的なルールとして定めたものです。用語の統一から精度評価の方法まで、規格が定める範囲は多岐にわたり、健全な3Dプリンタービジネスの発展を支えています。

3Dプリンターは長らく試作用途が中心でしたが、最終製品の製造にも使われるようになり、メーカーごとにばらばらだった用語や評価方法をそろえる必要が出てきました。この流れの中で、国際規格・国内規格・業界規格がそれぞれの役割を担うようになっています。

規格が必要とされる理由

規格が必要とされる一番の理由は、メーカーや事業者ごとの用語や表記のばらつきをなくすことです。同じ「造形方式」でも呼び方が統一されていなければ、発注時や比較検討の場面で混乱が生じます。

また、規格には品質の確保という役割もあります。造形物の寸法精度や強度をどのように評価するかが定まっていないと、粗悪な製品と信頼できる製品の区別がつかなくなり、3Dプリンターの特許侵害や法的リスクへの懸念にも繋がります。

航空宇宙や医療のような規制産業では、法的に一定の品質基準を満たすことが求められるため、規格への準拠が事業継続の前提になる場合もあります。こうした背景から、3Dプリンター業界全体で規格化の動きが進んでいます。

国際規格・国内規格・業界規格の違い

3Dプリンターの規格は、対象範囲によって国際規格・国内規格・業界規格の3つに大きく分けられます。

種類主な策定主体特徴
国際規格ISO、ASTM International世界共通の用語・プロセス・評価方法を定める
国内規格日本産業標準調査会(JIS)国際規格と対応しつつ、国内向けに整備される
業界規格各国の認証機関、業界団体特定分野や製造サイトの認証基準を定める

国際規格は世界共通のルールとして、国境を越えた取引や製品比較の基盤になります。国内規格はその国際規格を踏まえつつ、国内の実情に合わせて整備される位置づけです。業界規格は航空宇宙や医療など、特定分野の要求を満たすための認証基準として機能し、製品の3Dプリンター品質保証に直結しています。

規格と造形方式の関係

3Dプリンターの造形方式は、国際規格上7種類に分類されています。材料押出、液槽光重合、材料噴射、結合剤噴射、シート積層、指向性エネルギー堆積、粉末床溶融結合が代表的な分類です。

造形方式ごとに使用する材料や工程が異なるため、規格も方式別に細分化されています。たとえば粉末床溶融結合は樹脂系と金属系に分かれ、それぞれ評価すべき項目が変わります。

このように規格は、造形方式の分類を土台にしながら、材料選定や品質評価の具体的な基準へとつながっています。より専門的な知識を得るには、3Dプリンターセミナーなどで最新の情報を得るのも有効です。次の章では、国際規格の具体的な内容を見ていきましょう。

3Dプリンターに関わる国際規格の種類

3Dプリンターの国際規格は、ISO(国際標準化機構)とASTM International(米国試験材料協会)が共同で策定しています。両者が連携することで、世界共通の基準として広く採用されている点が特徴です。

規格は用語を定めるものから、造形方式ごとの評価方法、製造サイト全体の品質保証まで、段階的に整備されています。ここでは代表的な3つの規格を紹介します。

ISO/ASTM 52900が定める基本用語と原則

ISO/ASTM 52900は、積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング)の一般原則と用語を定めた規格です。2015年に初版が発行され、2021年に改訂版が発行されています。

この規格が対象とするのは、材料を連続的に付加しながら立体形状をつくるという積層造形の基本原理です。造形方式の名称や工程の呼び方をこの規格に沿ってそろえることで、メーカーや発注者の間で認識のずれを防げます。

ほかの多くのAM関連規格が、この52900の用語定義を土台にして作られている点も押さえておきたいポイントです。これは3Dプリンターのデータ販売などのビジネス領域でも重要な基準となります。

造形方式ごとに定められた個別規格

積層造形には材料押出や粉末床溶融結合など複数の方式があり、それぞれに対応した個別規格が存在します。方式ごとに材料や工程の特性が異なるため、評価すべき項目も変わってきます。

たとえば金属粉末を扱う粉末床溶融結合では、粉末の品質や造形物の機械的性質を評価する規格が定められています。樹脂を扱う方式では、材料の耐熱性や強度に関する基準が中心になります。

このように個別規格は、造形方式の分類を踏まえながら、実際の製造現場で使える具体的な評価基準として機能しています。導入時は3Dプリンター通販サイトなどで仕様を確認し、適切な規格に対応したものを選ぶことが重要です。

AM製造サイトの品質保証規格

ISO/ASTM 52920は、AMの製造工程全体における品質保証の仕組みを定めた規格です。受注から設計準備、材料管理、造形、後処理、検査、梱包、出荷まで、一連の工程を対象にしています。

この規格に基づく「AM製造サイト認証」は、第三者機関による審査を経て取得する認証制度です。認証を取得することで、製造事業者は顧客の品質要求を満たす体制が整っていることを客観的に示せます。

航空宇宙や医療のような規制産業と取引する際には、こうした認証の有無が発注先選定の判断材料になる場合もあります。また、事業縮小や機材更新で不要になった3Dプリンターの買取を依頼する際にも、認証の取得状況が査定に影響することがあります。国際規格を理解することは、次に紹介する国内規格との対応関係を把握するうえでも欠かせません。

日本国内の3Dプリンター規格

日本国内では、日本産業標準調査会が定めるJIS規格として、3Dプリンターに関わる規格が整備されています。国際規格の内容を踏まえつつ、国内での運用に合わせた形で定められている点が特徴です。

代表的な規格として、用語を定めたJIS B 9441と、材料の特性を定めたJIS K 6821があります。

JIS B 9441が定める用語と基本概念

JIS B 9441は、付加製造(AM)に関する用語及び基本的概念を定めた規格です。適用範囲や引用規格に加え、プロセスカテゴリ、材料、造形物の評価方法など、幅広い用語が体系的に整理されています。

この規格は国際規格のISO/ASTM 52900と対応する形で作られており、附属書には日本産業規格と対応国際規格との対比表も収録されています。国内で積層造形に関わる用語を使う際は、この規格が基準になります。

用語の統一は地味に見えますが、発注時や契約時の認識違いを防ぐうえで実務上の効果が大きい部分です。

JIS K 6821が定める材料規格

JIS K 6821は、材料押出方式(FDM/FFF)の3Dプリンターで使うポリ乳酸(PLA)フィラメントの特性を定めた規格です。2020年2月に制定され、日本国内でFDM方式に特化した規格としては初めてのものでした。

対象となるのは、公称直径1.75ミリメートルのポリ乳酸フィラメントです。真円度や引張強さ、層間接着強さなど10項目の材料特性について、測定方法が定められています。

項目区分主な測定項目
形状・強度真円度、引張強さ、層間接着強さ
押出安定性押出安定性、連続押出性
耐久・安全性耐加水分解性、揮発性化学物質の放散量
材料組成乳酸重合体含有率、融点、フィラメント径

初回ロットや設備変更後は10項目すべての試験が求められ、量産ロットでは真円度、引張強さ、層間接着強さを中心に試験する運用になっています。

国内規格と国際規格の対応関係

JIS規格は独自に策定されるのではなく、国際規格と対応関係を保ちながら整備されています。JIS B 9441がISO/ASTM 52900に対応しているように、多くのJIS規格には対応する国際規格が存在します。

この対応関係があることで、国内向けに整備された規格であっても、海外の取引先や規格に慣れた事業者との間で認識をそろえやすくなります。輸出入を伴う製品や部品を扱う場合は、国内規格だけでなく対応する国際規格も確認しておくと安心です。

国内外の規格の全体像がつかめたところで、次は実際の選定や発注の場面でどう活用すればよいかを見ていきましょう。

3Dプリンターの規格を選定や発注に活かすポイント

規格の知識は、単に覚えるだけでなく、実際の選定や発注の場面で判断基準として使うことに価値があります。ここでは発注前に確認すべき項目と、規格対応が取引に与える影響を整理します。

規格を意識した選定ができれば、発注後のトラブルを減らし、取引先からの信頼も得やすくなります。

発注前に確認すべき規格対応の項目

3Dプリンターの発注や外注サービスの利用を検討する際は、まず用途・造形方式・造形サイズ・使える素材の4つを整理することが基本です。そのうえで、対応するデータ形式や規格への準拠状況を確認します。

STLをはじめとする3Dデータの形式は数十種類あり、対応できる形式はプリンターやサービスによって異なります。事前にデータ形式の対応状況を確認しておくことで、発注後のやり直しを防げます。

確認項目チェックポイント
用途・造形方式試作用か最終製品用か、対応する造形方式か
データ形式STLなど必要な形式に対応しているか
材料規格JIS K 6821などの材料規格に準拠した材料か
後加工・品質保証表面仕上げなどの後加工、AM製造サイト認証の有無

金属部品や後加工が必要な造形物を依頼する場合は、後加工まで一貫対応できるかどうかも選定の重要なポイントです。

規格対応が信頼性や取引に与える影響

規格に対応しているかどうかは、取引先からの信頼を左右する要素になります。とくに航空宇宙や医療のような規制産業と取引する場合、AM製造サイト認証のような品質保証規格への準拠が、発注先を選ぶ際の前提条件になることがあります。

規格に準拠した材料や工程を使っていることを示せれば、初めて取引する相手にも品質面での安心感を伝えやすくなります。複数の業者を比較する際は、価格や納期だけでなく、規格対応の状況も判断材料に加えることをおすすめします。

今後の規格化の動向

3Dプリンターの規格化は、これまでの試作用途中心の段階から、最終製品製造や建設分野など新しい領域へと広がりつつあります。国内では国土交通省が建設用3Dプリンターの材料に関する規制緩和を進めており、小規模建築物向けの仕様規定の策定などが進んでいます。

業界全体としては急成長期を経て市場が成熟段階に入りつつあるとされ、産業用3Dプリンター市場は今後も一定の成長が見込まれています。規格化の動きは今後も続くと考えられるため、最新の規格動向を継続的に確認しておくことが、選定や発注で失敗しないためのポイントです。

まとめ:3Dプリンターの規格を理解すれば選定も発注も迷わなくなる

ここまで、3Dプリンターの規格が必要とされる理由から、国際規格・国内規格の種類、選定や発注に活かすポイントまで紹介してきました。ISO/ASTM 52900のような用語規格から、JIS K 6821のような材料規格、AM製造サイト認証のような品質保証規格まで、規格は段階的に整備されています。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 規格は用語統一・品質確保・信頼性向上のために整備されている
  • ISO/ASTMの国際規格とJISの国内規格は対応関係にある
  • 発注前にデータ形式や材料規格、品質保証の対応状況を確認する

規格の全体像を理解しておけば、発注先や機種を選ぶ際にも、価格や納期だけでなく品質面の判断材料を持てるようになります。

3Dプリンターの導入や外注を検討している方は、まずは自社の用途に合った規格対応の確認から始めてみてください。

3Dプリンター 規格に関するよくある質問

参考文献

  1. JIS B 9441:2020 付加製造(AM)-用語及び基本的概念 | 日本産業標準調査会
  2. ISO/ASTM 52900:2021 Additive manufacturing - General principles - Fundamentals and vocabulary | ISO
  3. ISO/ASTM 52920:2023 Additive manufacturing - Qualification principles | ISO

執筆者

3D With 編集部
3D With 編集部

編集部

3D With編集部は、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)業界の最新ニュース、技術解説、市場動向、製品情報をわかりやすく発信する専門編集チームです。国内外の信頼できる情報をもとに、製造業の意思決定に役立つコンテンツを提供しています。

監修者

3D Withリサーチチーム
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リサーチチーム

3D Withリサーチチームは、3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリング(AM)分野の技術情報、市場動向、製品データ、国内外の公開情報を調査・検証する専門チームです。信頼性・正確性を重視し、公開前のコンテンツを専門的な視点から監修しています。

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